私が初めて白いお花をきれいな色に染めたのは
小学生のころだったと思います。
夏休みによく、
大好きな祖父母の家に1人で泊りに行ったときに
祖父に教えてもらったのです。
濃いピンクの花びらをすりつぶして、
鮮やかな色水を作ってグラスに入れてくれました。
その段階で私は既に
きれいな色水のとりこになっていましたが、
「このお花を入れたらどうなる?」と
祖父は私に白いお花を渡してくれました。
美しく染まったお花は、
当時の私には、魔法にしか思えません。
「どうして白い花がピンクになった?」
理科系で小学校の校長先生をしていた祖父は
穏やかで口数が少なかったですが、
こんなふうに私に問いを出しては
にこにこといろんなことを教えてくれました。
「お花がピンクのお水を飲んだのかなぁ」
祖父も母も理科系で現実派なのに、
超文系で夢見心地の私は、
たいていこんなふうに、ふわっと答えます。
祖父は決して否定することはなく、
「そうか」とにこにこ笑って、
お花の茎の断面を見せながら、
植物がお水を吸い上げるしくみを
私にもわかることばで教えてくれるのです。
私は祖父とのこんな時間が大好きでした。
こんな大切な思い出がたくさんあります。
会社員時代に後輩やスタッフに教えたときや
コーチングや研修で答えが返ってこないとき、
私はつい、知っていることを話しすぎてしまいます。
それをふりかえって反省しているときに、
よく祖父の顔が浮かびます。
私の答えが間違っていても、ふわっとしていても、
「そうか」と笑っていた祖父の顔を。

お花屋さんに行って、
きれいなブルーに染まったカスミソウを見つけて、
小学生のころの祖父との思い出がよみがえりました。
亡くなって20年以上たっても、
祖父は生まれながらの私のコーチです。